2013年5月8日水曜日

美術の力は正しい展示環境でのみ十分に発揮されることについて

GWの美術館めぐり第2弾。二人目のフランシスさん、フランシス・ベーコン展について。
(もうひとりのフランシス・アリスさんについてはコチラ

2.  『フランシス・ベーコン展』@東京国立近代美術館
フランシス・ベーコンは20世紀で最も偉大なペインターの一人であり、リヒターと並んでマーケットでも最も高い価格で作品が取引されるアーティストの一人。
没後の大規模個展としては日本を含むアジア初ということなので、当然に期待は高かったわけだが、個人的にはあまりピンと来なかった。

33点という作品数がいまいち物足りないということについては、それだけでも時価総額100億円は超えるだろうと思われることや、作品を集めること自体の大変さを考えれば多めに見ざるを得ないかなと思う。

一番残念だったのは、近代美術館の展示室そのものがあまりにイケていないということで、こればかりはもうどうしようもない。
雑居ビルのような低い天井と鬱陶しい柱のでっぱりに囲まれていては、ベーコンの絵画の凄まじさはなかなか伝わらない。スペースが作品の力を殺してしまっている感じがして非常に残念だった。

僕はベーコンの作品をクリスティーズ、サザビーズのオークションハウスの展示室で何度か見たことがある。
当然にそのシーズンのオークションの目玉の1つであり(だいたい一番高価な作品はベーコン、ウォーホル、リヒターのどれかなのだ)、一番いいところで展示される。
オークションハウスの展示室というのは実は素晴らしいところで、空間・ライティングも含めて商品たる作品の魅力を最大限発揮できるような展示はミュージアムに全然負けていない。
ゴージャスなオークションハウスの大きな展示室の中央に正しく飾られたとき、ベーコンの絵画とはその一室の空間を支配するくらいの強烈な存在感を放っていた。
そこには周囲の作品を霞ませ、観るものの惹き付けて放さない圧倒的なアウラがあった。

それが今回の近代美術館の展示では感じられなかった。
それが作品そのものが十分に魅力的でなかったせいなのか、
僕の感受性の鈍りのせいなのか、展示されている環境のせいなのか、確実なことは言えない。
でも、僕としては同じ作品を別の空間で観ることができたら、まったく違うものが見えたのではないかと思ってしまう。

ハコを作ったり変えたりするのは簡単ではないけど、正しいハコを選んだり、ハコにあった作品を選ぶということがいかに重要かということを二人のフランシスにあらためて考えさせられました。


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